御頭祭

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御頭祭

おんとうさい

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御頭祭

4月15日諏訪大社上社では、年中神事の中で最も重要といわれる御頭祭が行われる。
別名「酉の祭・大御立座神事」と呼ばれている神事で、この地域の狩猟や五穀豊穣への願いと感謝を込めて行われる。
上社本宮の御霊代を神輿に乗せて、前宮へ移動し、前宮の十間廊で供物として果物や野菜や肉などをお供えする。
その供物の中に鹿の頭が含まれていることから御頭祭と呼ばれ、由緒や源流は諏訪地域の文化や生活に大きく関わっている。

御頭祭

多くの神社では供物として捧げるものは魚・野菜・果物が一般的だが、御頭祭については、鹿やキジも野菜などと同じ大地からの恵みとして諏訪の神に送られる。
これはもともと諏訪大社に祀られている神々が諏訪地方の土着の神とされていることから関係している。
ミシャグジ神、蛇神ソソウ神、狩猟の神チカト神、石木の神モレヤ神などが諏訪の神としてあげられるが、御柱や蛙狩などの神事はほとんどがこの土着の信仰に関わるものなのだそうだ。
その名残として残っているのが、元旦に行われる蛙狩神事の蛙の生け取りであり、御頭祭の供物であったりする。

御頭祭

現在では御頭祭で捧げられる鹿の頭は剥製となっているが、以前は神事に捧げるものとして狩りが行われ、多いときには75頭もの鹿が供えられたそうだ。
その中には必ず耳の裂けた雄鹿がいるということが諏訪大社の七不思議として知られている。

神事は午後1時、諏訪大社の氏子たちが上社本宮に集まるところから始まった。
平日の昼間でも観光客や、この神事を知る人たちが集まり、それなりに賑わっている。
文化財に指定されている四脚門の前には幟や薙刀などが並べられ、白と黄色の衣装をまとった地域の人たちが拝殿の前でお祓いを受けていた。

お祓いを受け、神輿に本宮の御霊代が入れられ、前宮へ向かう行列はスタート。
先頭には神事のための道具を持ち衣装をまとった人たち。
その次に氏子の人たち。
宮司が馬にまたがり、その後ろを神輿が進む。
例年は300人程度の人が集まるというが、この日はそれを超える人数で、関係者の方も行列を眺め「いつもより多い」と言っていた。
特に色彩の華やかな行列というものではないが、平日でも交通量のある道路をこれだけの人数が練り歩くのは大きな行事。

御頭祭

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上社本宮から前宮までは徒歩でおよそ15分。
祭りの行列でも30分ほどで到着する。
前宮に到着すると、祭り道具を持っていた人たちは入り口付近で待機し、神輿が十間廊へと運ばれる。
十間廊の中ではすでに鹿の頭が3つと酒が供えられ、列に参加していたたくさんの人たちも建物の中に入った。

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十間廊の中に運ばれた神輿の場所は、本来は大祝が座る場所で、明治時代に世襲制度が廃止されれてからこのような形式になったのだという。
御杖柱(みつえばしら)と呼ばれるヒノキの柱が神輿の前に立てられ、野菜や肉などの供物を捧げる献餞、祝詞奏上、玉串奉奠と神事が進み、撤餞で神事は終了。
鹿の頭や生きたキジが捧げられるということ以外、特別なことはない神事なので、静かに進行していった。

御頭祭

特別な信仰形態を残す諏訪大社の神事だからこそ、御頭祭、御柱や蛙狩、御舟祭など、特殊な神事が多くみられるが、それだけに、神事の内容やイベント事としてよりもまつわる様々な文化や生活、歴史などを知ることが大切なのだと感じた。
日本神話に伝えられる"健御名方命が祭神として諏訪に現れるまで"とは別に諏訪地方の神としてのミシャグジ、現人神として存在していた大祝、それらに関わるしきたりなど、神事を人の集まる行事としてではなく、裏側にあるものを地域に根付いた文化として見ることが、より諏訪大社を知ることになるのだと思う。

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